気が付けば前回の投稿から数か月経ってしまいました。この期間にLAMやJHUでは分光器の開発が着実に進んでいます。また、ハワイ観測所では2022年11月の試験観測で2台目の分光器(”SM3″)がファーストライトを迎えたものの、その後に続く2回の試験観測は悪天候でキャンセルになりました。更に、ASIAAのチームがすばる望遠鏡を訪問し、主焦点装置とメトロロジカメラのアップグレード作業を行いました。
このようにいろいろな出来事があったのですが、なかでも大きな出来事のひとつは3本目の光ファイバーケーブルの敷設でした。
PFSの観測装置で使用する光ファイバーケーブルは全長約60mほどあるとても長いケーブルです。装置交換や開発を効率よくするために、3つの部分から構成されています。この内、一番長いケーブルは全長約55mほどあり、すばる望遠鏡の主焦点部で捉えた天体の光を、ドーム棟の4階に設置している分光器へと運搬する役目を担っています。
ファイバーケーブルは全部で4組ありますが、2021年、2022年にそれぞれ1本目、2本目のケーブルを望遠鏡に取り付けられました。
3本目のファイバーケーブルは2023年2月に敷設されました。55mもある長いケーブルですので、輸送用の箱から取り出して広げるのは大変です。箱の中でぐるぐる巻かれているファイバーを数人がかりで取り出し、ドームの床いっぱいに広げて敷設前の性能を確認するところから作業は始まりました。
悪天候の影響で予定していた初日から敷設を始めることができませんでしたが、すばる望遠鏡のデイクルーの尽力のおかげで2日間の工程で無事に敷設することができました。
現在は敷設によるストレスがファイバーにかかっていないかFRD(※)と呼ばれる指標を使ってモニタリングをしているところです。
※ FRD: Focal Ratio Degradation.
ファイバーにストレスがかかり、入射光よりも広がった光がファイバーから出てきてしまう現象。FRDが悪くなったり、望遠鏡の姿勢によって大きく変化すると観測スペクトルの形状に影響を与えます。