以前紹介したように、2本目のファイバーケーブルは既に国立天文台ハワイ観測所に輸送され、すばる望遠鏡への敷設のタイミングを待っていました。メンテナンス作業の調整のおかげで4月に2週間ほど敷設と試験期間を割り当てられました。今回はファイバーケーブルの敷設と試験作業を報告します。
敷設と試験はカブリIPMUとハワイ観測所のメンバーが、ブラジルをはじめとするファイバーケーブル製作チームのアドバイスをリモートでもらいながら進めました。第一週目には約60mのケーブルを箱から取り出し、床に広げて敷設前の性能試験を行いました。性能を評価する特徴の一つにFRD (Focal Ratio Degradation) と呼ばれるものがあります。もしファイバーがストレスを受けたりねじれていたりすると、FRDが悪くなります。まず初めにFRDが輸送前に試験された結果から予測される値であることを確認し、輸送中(また開梱中に)ファイバーに余分な力がかかっていないことを確認しました。
第二週目、4/11の週にファイバーケーブルを敷設しました。ファイバーケーブルは望遠鏡の頭頂にある主焦点装置とドーム棟4階にある分光器をつなぐため、そのルートは主に2つの部分に分かれます。下図のように、望遠鏡上に敷設される部分と、ドーム棟に敷設される部分です。
その為、敷設作業も2段階に分けて行われました。第一工程は望遠鏡の上から下にケーブルを這わせドームへ残りのケーブルを移動させる作業、第二工程はドーム棟の1階から4階までファイバーを引っ張り上げる作業です。詳しくはこちらの記事をご覧下さい。2つの工程の間にFRDを測定し、第一工程の敷設に問題がないことを確認し必要に応じてフィードバックをかけられるようにしました。
敷設は10名以上のメンバーで行い、時間のかかるところもありましたが、敷設後の試験結果ではFRDは変化していないことが確認されました。つまり、敷設作業によってファイバーに余分な力やストレスはかからなかったことを意味します。望遠鏡の傾きに対してもFRDは安定していました。現在はFRDを長期間モニターし、温度依存性などを評価しているところです。
敷設作業に関わったすばる望遠鏡のデイクルーの尽力と感謝します。またファイバーケーブル製作チームに改めて感謝します。