2023年11月、大きなマイルストーンを迎えました。ついに分光器が4台、国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡に揃いました!
PFSプロジェクトでは約2400本のスペクトルを同時に観測するために、分光器を4台開発しています。分光器の開発はマルセイユ天文物理研究所(LAM)、ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)、プリンストン大学、ブラジルコンソーシアムがBertin Winlight社と協力して開発を進めてきました。2023年7月、9月にそれぞれ3台目、4台目の分光器の輸送審査が行われ、それぞれ1ヶ月後にすばる望遠鏡に到着しました。
プロジェクトでは12月に試験観測を予定していたので、4台目の分光器が観測に間に合うように、3台目を輸送した後はすばる望遠鏡での組上げよりも4台目の完成を優先させ、ふたつの分光器敷設作業を同時に行うことにしていました。一方で、組み上げ作業を少しでも効率よく行うために、3台目の分光器が各部分に分かれて梱包されていた箱を分光器室のあるドーム棟の4階まで運搬したり、光学ベンチの設置を先行してしたりしていました。
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無事に4台目も輸送され、2台の分光器の組み上げ作業が2023年10月末から3週間半ほどかけて行われました。作業にはLAMから3名のメンバーがハワイを訪問し、すばる観測所のメンバーもと一緒に行いました。また、同じ時期にVPHG [注]と呼ばれる部品の向きを修正する作業も行われました。VPHGの向きが想定と異なってしまっていて、VPHGを過率した後の光が予想よりも暗くなっていることが分かったためです。
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4台目の分光器の到着までに予想以上に時間がかかりましたが、チームの尽力とすばる望遠鏡のデイクルーやスタッフの協力が功を奏してLAMのメンバーが滞在している間に組み上げが完了しました。
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分光器室は手狭になりましたが、分光器が4台揃った姿は圧巻です。
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今回の作業の結果、JHUで開発・試験を行っている4台目の近赤外カメラを除いて、全ての観測装置がすばる望遠鏡に設置されたことになります。残念ながら12月の試験観測は中止になりましたが、現在は組み上げ・修正後のカメラの試験をしているところです。すばる望遠鏡での性能を評価し、安定的に動くようにしながら、今後の試験観測への準備を進めていく予定です。
[注] VPHG (Volume Phase Holographic Grating:体積位相ホログラフィックグレーティング)はガラスの間にゼラチンを挟み、ふたつの材質の屈折率の違いから光を分散させる(いろいろな波長に分ける)光学素子です。