今年の5月にすばる望遠鏡にメトロロジカメラが到着したことを紹介しましたが、その後、ASIAA(Academia Sinica Institute of Astronomy and Astrophysics、台湾)のメンバーを中心にすばる望遠鏡での最終的な組み上げ・試験を行ってきています。今回はここ3か月のメトロロジカメラの作業についてお話します。
2400本のファイバーの位置を効率よく測定するために、メトロロジカメラは全てのファイバーの像を一回の露出で、かつ均質な像質で取得できるように設計されています。カメラ本体とは別に輸送されたレンズ部品を組み込んだ後に、視野内で均質な像が得られるように光学調整を行いました。すばる望遠鏡の主焦点面とメトロロジカメラの距離は約18mあります。そのため、ドーム床の同じ距離だけ離れたところにピンホールマスクを置いて、マスク像を見ながらメトロロジカメラの主鏡等の位置を調整しました。
ASIAAチームによる光学調整の様子。ドームの床にメトロロジカメラとピンホールを実際の運用と同じ距離だけ離して設置して像質を調べています。
また、メトロロジカメラを望遠鏡に取り付けて、望遠鏡との取り付け面の機械位置や望遠鏡のバランス、電源やネットワークなどメトロロジカメラを運用するのに必要な資源が供給されるかの確認も行いました。望遠鏡の観測制御システムを通してメトロロジカメラを制御できるようにコマンドの統合も進めています。
試験のためにすばる望遠鏡のカセグレン焦点に取り付けられたメトロロジカメラ
いよいよ残すところは、望遠鏡に取り付けての最終的な光学調整やドーム内の対流による効果などを調査する試験観測のみになっています。試験観測では、すばる望遠鏡の主焦点部分にピンホールマスクを取り付け、観測中のファイバースポットを模します。主焦点ユニットの一部は、既にすばる望遠鏡で活躍しているHyper Suprime-Cam(HSC)と共用ですが、試験観測に先立ってピンホールマスクをこのユニットに取り付ける試験も行いました。
その他、試験に必要なコマンドやツールの開発など、試験観測に向けて準備を進めています。