PFSサイエンス検討チームではPFSを用いた大規模なサーベイ観測の立案を行なっています。PFSが目指している3つの大きな科学目標(ダークマター・ダークエネルギーやニュートリノの性質を明らかにする「宇宙論」研究、我々のいる天の川銀河の歴史を明らかにする「銀河考古学」研究、そして、遠くの銀河の生い立ちとその周りの環境との関係を明らかにする「銀河形成進化」研究)に関して、それぞれワーキンググループを設けて、どのような観測を行うべきかについての詳細な検討を行ない、観測提案書としてまとめています。
※PFSが目指すサイエンスについて詳しくは過去の記事やPFSの公式webサイトもご覧ください。
8月7日から9日にかけて、ドイツはガルヒンにあるマックス・プランス宇宙物理学研究所 (Max Planck Institute für Astrophysik : MPA)で会議を開催し、観測提案の現状について議論しました。会議では特に、我々が達成を目指している目標は本当に高い科学的価値がありかつ PFS の特徴を十分に反映したものなのか、観測の実現可能性はきちんと評価されているのか、より強力な観測提案にするにはどうすればよいのか、といった点に焦点をあて、外部評価者からも意見を聞きながら観測提案をレビューし、そこでの議論を基に今後の方針について話し合いました。会議には約50名が集まり、熱い議論を戦わせました。
これまでのサイエンス検討チームの多大な努力のおかげもあり、今回改めてPFSは非常にユニークで強力な観測装置であること、科学的に非常に重要な成果が期待されること、を再確認できました。一方で、観測ターゲットの選び方や、観測から得られるデータ品質の評価、シミュレーションによる観測実現性の確認といった点において、観測提案を改良するためにやるべきことがまだまだ多くあることも確認できました。今後は、この会議での議論をもとに作業・検討を進め、計画の詳細を詰め、観測提案書を改訂していきます。
今回の会議には装置開発チームからも数名が参加し、効率良く観測を進めるためのファイバー配置や、データベースの開発について、サイエンスチームと意見交換を行いました。いずれも簡単に結論の出ない、難しいトピックですが、サーベイ観測を準備し進めていく上で非常に重要です。観測天文学、特にPFSのような大型かつ複雑な観測装置を用いたサーベイ研究では、装置開発チームとサイエンス検討チームが協力して物事を進めていくことが不可欠です。お互いが宇宙の謎を解き明かすという共通の目標に向かって日々努力している姿が垣間見える会議でもありました。