今回は、2022年9月に達成したマイルストーン二つ目をご紹介します。
9月の試験観測中に、ついに分光器で星のスペクトルを撮ることができました。エンジニアリングファーストライトです!
PFSプロジェクトは2018年にメトロロジカメラが国立天文台ハワイ観測所へ輸送されて以降、すばる望遠鏡に搭載した状態での試験を行ってきています。とりわけ、2021年9月からは主焦点装置から分光器までをつなげ、本格的な試験観測を行ってきています(詳しくはこちら)。
これまでに、望遠鏡に載せた状態でのファイバー配置アクチュエータ「コブラ」の駆動パラメータの測定や主焦点装置PFIのアラインメント、ガイドカメラの機能試験、データ解析ソフトウェア開発のためのデータ取得などいろいろな試験を行ってきました。その中で最も重大な試験項目は「天体をファイバーに導入する」ことです。
PFIには主焦点面全体を見渡せるカメラがついていないため、PFSは基本的にはこれまでの観測で位置が分かっている天体を観測します。この時、下の図のように、天体の位置がファイバーが取り付けられている主焦点面上でどこになるかを予測し、同じようにメトロロジカメラで主焦点面上のファイバーの位置を測りながらコブラを動かします。
この過程で、天体の位置計算とファイバーの位置計算を合わせることが重要なのですが、これを実際に天体を観測して改善しています。2022年6月に初めて天体をファイバーに導入しようとしましたが、天体とファイバーの位置が大きくずれていることが発覚しました。その理由を皆で議論し、位置計算方法を改善した後に2022年9月に再挑戦したところ、分光器に多くの天体の光を入れることができました。数百本の天体のスペクトルが写った分光器の画像は圧巻です。
今後の観測では、視野全体でどの天体の光もファイバーの真ん中に入るように位置計算方法の改善を目指し、装置性能評価などを行っていく予定です。