分光器1台目で夜空のスペクトルを取りました!

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前回紹介したとおり、1本目のファイバーケーブルがすばる望遠鏡に取り付けられましたが、実はこの時にもうひとつ取り付けられた装置があります。「夜光」(夜空からの光)を調べるためのミニ望遠鏡、SuNSSです。

夜光は地球の大気から出ているため、地上から観測する天体のスペクトルにはノイズとして含まれます。そのため、検出器の画像からスペクトルを取り出すときに、夜光ノイズを取り除く必要があります。PFSではファバーの一部で夜空そのものを観測し、取り除くべきノイズスペクトルを見積もります。
ここで難しいのは夜光は時間によって変化し、また場所によっても違いがあることです。PFSの視野は1.5平方度(満月の約7倍)と広いため、一部のファイバだけで他の全てのファイバに適したノイズスペクトルを見積もることが肝になります。

そこで、すばる望遠鏡とPFSから見える夜光の様子を調査するために開発されたのがSuNSS(the Subaru Night-Sky Spectrograph)です。使うのは約4cmのレンズと8mの鏡をもつすばる望遠鏡に比べるととても小さいですが、PFSと同じ視野と焦点比をもち、実際に観測する状況をなるべく再現しています。 すばる望遠鏡に取り付け、 ファイバーケーブルと分光器を使って夜空を観測します。SuNSSはプリンストン大学のJim Gunn教授が設計、製作(ファイバーケーブル部分はブラジルチームが製作)しました。

(a) 望遠鏡に取り付けられたSuNSSとPFSファイバーケーブル。(b) SuNSSは小さい二つの望遠鏡です。(c) SuNSSをファイバーケーブルシステムにつなげたところ。

2021年2月、ファイバーケーブルの取り付けが終わった翌日にSuNSSの取り付けを行い、その日の薄明の時間を使ってアライメントのテストを行いました。この時、取り付けられたばかりのファイバーケーブルと分光器で星のスペクトルを捉え、夜光のスペクトルもとることが出来ました!!

SuNSSとファイバーケーブル、分光器を使って観測した夜空のスペクトル(870-915nmを抽出)。OH分子からの輝線(緑)がよく見えています。

実際に観測された夜光スペクトルを使って画像処理ソフトウェアの開発がより積極的に進んでいます。今後、 主焦点装置が輸送されるまでの間や、PFSが望遠鏡についていない時間を SuNSSを使って有効活用し、夜光の調査と画像処理の開発を進めていく予定です。