試作ファイバーケーブルを望遠鏡に敷設


メトロロジカメラが試験のために望遠鏡に取り付けられた、と紹介しましたが、実はメトロロジカメラ以外にも試験のために望遠鏡に取り付けられたものがあります。ファイバーケーブルの試作ケーブルです。半年ほど前の話題ですが、今回は試作ファイバーケーブルの望遠鏡敷設のお話です。

PFS では、天体からの光をすばる望遠鏡の主焦点で光ファイバーの一端に導入し、もう一方の端から分光器に射出します。主焦点と分光器は物理的にだいぶ離れたところにあるので(http://pfs.ipmu.jp/instrumentation.html )、両者の間をできるだけロスなく光を伝達することが重要になります。ここで必要になるファイバーケーブルのうち、望遠鏡の筒頂部からドーム建物の中を通りPFS分光器が設置される特設室(クリーンルーム)までの 50m 程度の部分の試作ケーブルが完成したことは以前の記事で紹介しました。2018年1月末に、この試作ケーブルを望遠鏡へ敷設し、光学試験を行いました。

敷設作業に先立って、まずはヒロ市内にある山麓施設でファイバーの光学性能を調べ、製作後の工場での状態と矛盾ないことを確認しました。その後、望遠鏡のある山頂へケーブルを運び、ここでも同様の確認作業を行ったのち、敷設作業を行いました。

一連の作業工程の様子を収めた数枚の写真を図にまとめましたのでご覧ください。まず、ケーブルを望遠鏡直下の床に広げた(1)のち、ケーブルの望遠鏡筒頂部に取り付ける側の一端をクレーンで引き上げて望遠鏡に取り付けて行きます(2~4)。次に、ケーブルの他端をドーム建物に引き込み、PFS分光器を設置するクリーンルームのある4階まで引き上げていきます(6~7)。


試作ケーブルの望遠鏡敷設の様子。矢印の順に、(1)ファイバーケーブルを望遠鏡のある観測床に広げておいたところ、(2)及び(3)ファイバーケーブルの、望遠鏡の筒頂に設置する方の一端をクレーンで引き上げているところ、(4)望遠鏡筒頂でのケーブル設置作業、(5)筒頂から望遠鏡側面のはしごに沿って這わされたケーブル、(6)ケーブルのもう一端を望遠鏡高度軸付近からドームの中へ引き入れる、(7)ドーム内に引き入れたケーブルを這わせていく様子、(8)ドーム4階にあるPFS分光器用のクリーンルーム内まで引き上げられたケーブル。

この敷設作業は2018年 1月30日 に行われ、引き続いて 1月31日から2月2日には光学データを取得し解析、その結果に基づいて議論しながら、より適切な形で光が分光器側へ伝わるケーブルの敷設方法を模索しました。敷設のノウハウとともに、ファイバーの望遠鏡上での性能について貴重なデータを取得できました。今後機会を改めて再びデータの取得と調整作業に臨み、実際のケーブル敷設作業につなげていく予定です。


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