PFSが取り付けられるすばる望遠鏡は1999年に科学運用が開始され、天文・宇宙物理分野の最先端の研究に使用されています。15年以上も運用を続けているすばるに最新の装置を取り付けるので、「ジェネレーションギャップ」に苦労することもあります。
今回はその一つであるネットワーク通信についてお話しします。
PFSは、天体の光を集めファイバーを配置する主焦点装置、ファイバーの位置を確認する測定カメラ、天体の光を分光しスペクトルを撮る分光器、そして分光器と主焦点装置をつなぐ長いファイバーケーブルといった機器(サブシステム)からなります。それぞれのサブシステム及びその制御モジュールは望遠鏡や制御棟の様々な場所に設置されており、お互い光ファイバーを利用して通信を行います。
すばる望遠鏡に同架されている光ファイバーは、望遠鏡が建設された当時に取り付けられたもので、現在普及している1Gbps光ファイバーネットワーク、PCI ExpressやUSB 3.0などといった通信機器が存在していなかった時代のケーブルです。一方で、PFSでは各サブシステムの通信速度の要求や完成後10年以上に及ぶ運用期間における代替品の入手性などを考えると、現在普及している最新機器を準備する必要があります。そこで新しい通信機器が古い光ファイバーケーブルで使用できるかが問題になってきます。
1月下旬にPFSで採用予定の通信機器を実際に接続して試験を行いました。仕様上の最高通信速度で通信できるかを調べることで、通信機器がフル性能で正常に利用可能かを事前に確認し、組上・試験時に初めて問題が発覚するといった事態が起こらないようにするためです。
今回の試験では、採用予定の通信機器のうち一つが正常に動作しませんでした。今後、試験時に得られた結果を基に正常に動作する可能性が高いと思われる機器を選定しなおし、再度試験を行います。
このように、制御機器についても個別要素がきちんと動作することをできるだけ実際の環境に近い状態で確認しながら観測装置の開発を行っています。