データ解析ソフト会議がプリンストンで開かれました


文:安田直樹(カブリIPMU)

PFSが観測を予定している銀河の多くは80億光年以上遠くにあり、肉眼で見える星の1千万分の1より暗いものです。このような非常に暗い天体の光から銀河の性質を正しく測定するには、観測データに含まれる誤差要因を丁寧に取り除く処理が、データ解析ソフトウェアに求められます。

9月20日から22日にかけて、米国はニュージャージー州にあるプリンストン大学 (Princeton University)に、PFSの2次元データ解析パイプラインを開発する、プリンストン大学、国立天文台、カブリIPMUの研究者が集まり、データ解析の方針、開発分担などについて議論しました。ここで『2次元』データ解析とは、2394本のファイバーから出てきた光を並べて記録した検出器の2次元の画像から、それぞれの天体の1次元スペクトルを取り出すまでの処理を指します。この後に、そのスペクトルから銀河の赤方偏移を決めたり、天体の輝線・吸収線の強さを測定したりする、1次元データ解析という処理が続きます。

PFSでは各天体からの光はそれぞれ別のファイバーを通って分光器まで導かれ、分光したスペクトルは検出器の上に並べて記録されます。多くの天体を同時に観測できるように、並べられたスペクトルの間隔はあまり広くなく、隣同士のスペクトルと重なっていますが、これらを正しく分離する必要があります。また、それぞれのファイバーは性質が微妙に異なるので、それらの影響を取り除くことも求められます。また、当然ながら、波長較正、フラックス較正なども精度よく行う必要があります。


(分光器の実験室ファーストライトの画像から。1枚の画像で約600本のスペクトルを取得する為、間隔が余り広くありません。)

さらに、すばる望遠鏡のあるマウナケア山頂のような観測条件の良いところでも、空が天体よりも1000倍くらい明るく光っています。この原因は大気中のOH分子の輝線です。OH夜光輝線は特定の波長で観測されますが、暗い銀河の光を捉えるためには、このOH輝線の影響をきれいに取り除いてやる必要があります。

会議では、上記のデータ解析上の問題点を確認し、観測されるスペクトルを模したシミュレーション(疑似)データを使ってソフトウェアの開発を進めていく方針で同意しました。2019年から開始予定の試験観測時に出てくる実際の観測データが処理できるように、準備していく予定です。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。